伽羅創記

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help リーダーに追加 RSS 紐育寄席 二〇〇八年 四月吉日

<<   作成日時 : 2008/04/13 10:52   >>

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  先週、日本人サタデー学校の新学期がはじまった。担任は今年も4年生である。保護者及び生徒には、入学・始業式の日の全校担任紹介まで知らされない。前年度、私が担任した子供たちから「先生、今度何年生担任なの?」と聞かれ「うーん、私もまだわからないんだよ」ととぼける。クラスで最も怒られていた男の子の一人が、それでもうるさく聞いてきた。

 男の子「ねぇ、何年生なの?ねぇ、先生、教えて」
  私  「知らないってば。どうしてよ?」
 男の子「ボソボソ」
  私  「え、なに?聞こえない。下向いてないで、はっきり言いなさい」
 男の子「5年生も、先生になってほしいから」
     (えーっ、私にあんな怒られたのに?)
  私  「そうかぁ。でも、まだわからないんだよね」
 男の子「宿題たくさん出してもいいから、先生になってほしい」
     
 ...じぃ〜ん。泣かせやがる。

  腕と度胸じゃ 負けないがァ〜
    人情からめばァ〜 つい ほろりィ〜 ♪

画像 ええ、マクラはここまでで、先日、紐育落語会主催の紐育寄席があった。今回は紐育寄席の顔と化している三遊亭京楽師と、京楽師の弟弟子で、昨年真打ちに昇進された三遊亭神楽師のお二方による豪華四席、出し物は以下。
一席目 平林 /京楽
二席目 家見舞い /神楽
三席目 転失気 /神楽
 トリ  心眼 /京楽

 初めて拝見した神楽師の高座は、言葉の歯切れがよく、せかせかでもなくのったりでもない、いいテンポだった。「家見舞い」も「転失気」も、とぼけたズレの面白さが伝わってきた。
 京楽師の芸風は毎度、いかにも三遊亭圓生から続く圓楽一門の伝統といった感じで品がいい。特に花魁、新造、廓の女将など、婀娜っぽくて得意とするものだろう。私もこれを観るのは、いつも楽しみである。
 
 NYになんぞいると、寄席なんか行けるのはものすごく貴重な機会なわけで、大したギャラにもならないのに、英語圏での落語の普及のために、はるばる日本からお越し下さる師匠方には、ただただ感謝あるのみだ。
 打ち上げで京楽師から聞いたことで、印象に残ったことがある。一つは「家見舞い」の解説だ。
画像 金のない男二人組が、兄貴分の引越し祝いのために、古物屋から厠に使っていた瓶を安く買い、水瓶と称して持って行く。バレないように水まで張っておくが、兄貴の家で出された食事には、ことごとくその瓶の水が使われていて、二人は何も食べられなくなってしまう、というのが筋だ。
「あの噺は、水の大切さを知らされるものなんです」と京楽師。なるほど、普段なにも考えずに使っている水だが、実に我々の生活のすみずみまで行き渡っているものだということだ。
 そしてトリで演った「心眼」、これは日本では公けにかけられない噺だという。理由は「めくら」という差別用語が出てくるためだ。「またそれか!」と、言葉狩り反対の私は叫んでしまった。
 「心眼」は盲目の男が主人公だが、夢の中で目が見えるようになり、自分の身勝手さや驕る心を思い知るという、なんら正統派のストーリーである。いやはや、平等・人権もここまでいくと、もうファシズムだな...。
 実は京楽師は、トリで「子別れ」をかけようと思っていたそうだ。しかし、当日「心眼」に変更したのは、客席に一人、盲目の人がいたからだった。真打ち昇進直後2年近く、椎間板ヘルニアで車椅子生活を余儀なくされ、自殺を考えたこともあるほどの体験から「障害者落語」と称するものを創作している京楽師らしい、決心のトリだった。

「落語てえものは、聞いていて決して害になるもんじゃない。落語ぐらいためになるものはありませんよ。落語を聞いていると、自然と人間のカドがとれて、やわらかになってくる。やわらかになってくれば、いうまでもなく人とのあたりがよくなって、ものごとが丸くおさまる。夫婦の仲だってよくなるし、家の中も明るくほがらかになる。このせちがらい世の中を楽しく生きぬくためには、もってこいのものなんですよ。」 (古今亭志ん生「なめくじ艦隊」より)


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コメント(3件)

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久しぶり、ごぶさた元気している?子供にもてて、あんたいい先生になっているわね。私、落語きいて、もっともっと丸くなりたいものよ。ベルリンはようやく暖かくなってきたわ。
MASU
2008/04/13 17:51
今年は仕事が忙しくお邪魔できませんでした。残念!
京楽師は二年前は「百年目」でしたよね。
こちらもあと少しで「百年目」の季節がやって来ます。ほっ。
私も言葉狩り大反対です。
どらく
2008/04/13 22:49
>MASUちゃん
いやー、もてているかどうかはわからないです。実は「先生は宿題が少ないからいい」とかいう話だったりして。わは。
ベルリンでも、私は落語聞いてました。懐かしいです。

>どらくさん
今週あたりが「百年目」の季節花盛りでしょうかね。私も日本人なので、桜には気がはやります。
言葉狩りはねぇ、あんなことしてたら思考停止で、読解・表現能力の衰退ですよ。
カラビ
2008/04/14 01:04

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