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<<   作成日時 : 2012/07/30 10:19   >>

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 昨日「手段と目的、二足の草鞋」を書いていて、一体才能とはなんなのだろうと考えた。そして何年か前に読んだあるエピソードを思い出し、それを探してまた読んだ。以下、無能唱元著「強くなる瞑想法」より抜粋。

*** ***
 I さんは版画家として有名な人です。そればかりでなく、日本最高の文学賞をとった小説家であり、また映画監督をしたこともあります。当代きっての才人であり、いわば現代の英雄(ヒーロー)と呼ぶにふさわしい人です。Iさんの高校時代、絵を志す友人たちが何人かいました。その中の1人のQさんは、非常に努力家で、東京芸術大学を三浪した後、四度目の挑戦でパスした人です。
 ところがIさんのほうは、最初の年に東京芸大に落ちると、あっさりと進学をあきらめ、新しく版画を始めたのです。Iさんが他の人と異なっていた点は“大きな夢を見続け”、“どんな時でも楽観的であり”、“自分自身と自分の仕事を、すばらしいものと信じて自画自賛していた”という三つの点にあります。
 そして、突然、第一の幸運が訪れました。
 Iさんの版画が、国際ビエンナーレ展に入賞したのです。これは大きな話題となりました。当時まだ、国際的な賞も少なく、社会的にもたいへん権威がありました。
 その後Iさんは、常にマスコミの寵児でした。離婚、再婚、外国生活、ユニークな制作、それらはことごとく話題になり、さらに小説や映画の世界でも活躍し、当代一流の芸術家としての地位を築いてしまったのです。
 
 一方、Qさんは、あくまでも真面目な努力家です。アルバイトに精を出し、収入のほとんどを制作に当て、精力的な創作を続けました。芸大を卒業すると、野望に燃えてパリに渡り、レストランの下働きをしながらアトリエに通ったのです。
 たしかに私の眼から見れば、Qさんの絵のほうがIさんよりは技術的にもしっかりしているし、芸術としてもレベルが上だと思われます。しかし、ある意味ではQさんの絵は真面目すぎたのです。Qさんは、いまだに社会からは一顧だにされず、彼の名を知る人も周囲の友人ばかりです。そして、五十歳に近づいたこの頃の彼は、絵に対する情熱まで失ったかの観があります。

 さて、このIさんとQさんの評価の違いは、何が原因なのでしょうか。二人を比較してみましょう。

@欲望−共通   二人とも、強い創作意欲に燃えていた。

A目標設定−ほぼ共通   二人とも、芸術家として社会に出ようとしていた。

B努力−ほぼ共通   やり方は違うが、二人とも創作活動にいそしんでいた。

C日常の情念−大きく異なる   
 Iさんは明るく、自分の将来についてバラ色に考えて、はっきりした鮮明なイメージを自分の心の中に描き続けた。
 一方、Qさんの情念は常に暗かった。その暗さは、自分の絵が売れるか売れないかわからないという不安からきている。そしてその不安は自己防御の姿勢となって現れ、他人を利用しても自分は他人に利用されまいとする人生観をもつようになった。結局、彼は人間関係において孤立してしまい、芸術という狭く特殊な世界で力のある人々からの信頼を得ることができなかった。

 日常の情念とは、要するに感情に裏打ちされたものの考え方のことです。それは、心構えともいわれるものです。
Iさんの日常の情念が「生き生きと明るい感情」であったのに対し、Qさんのそれは「暗く、不安な感情」だったのです。
「成功は楽観的な心構えによる」
*** ***

 おわかりの人もいると思うが、このIさんとは池田満寿夫である。(実際には池田満寿夫は芸大受験を3回しているらしい) 芸大受験の執着を捨て、油絵にも執着せず表現媒体を版画に変え、執筆では「エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を受賞した。その後も彫刻、陶芸、多岐に渡る創作活動をしていた。フットワークの軽さやTVやマスコミに出てほがらかだった姿を思い出すと、やはり彼は人生を楽しんでいる明るい人という印象があった。
 
 池田満寿夫のマルチ・タレントぶりに関して、美術評論家中原祐介氏のコメントがある。

「多才な美術家ほど美術家としては信用されないというムードがある。池田に対する美術界の対応にもそれがあった。この国では、この道一筋の純粋主義が信用されるのである」

(純粋主義は当時の文学界にもあったようで、文壇から「たかが画家が芥川賞を取ったのはけしからん」という声も上がったようだ)

 なんであれ、Qさんは「芸術家はアトリエにこもって制作していればいい」という当時の美術界の概念に属し、Iさんは手段に執着せず、どの媒体・分野であっても自己表現をする、という一番の目的を遂げた人だったと思う。


(トップ写真 「赤い帽子の女」池田満寿夫)


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
うーん!凄く考えさせられるプログでした。
これからの私の将来。努力は惜しまないけど楽観的に行きましょう。
50歳になって再スタート。楽しみながら。
イチ
2012/07/31 16:44
いち姉、コメントありがとう御座います。
私もこのエピソードは、すごく腑に落ちるものがあります。手段に執着しないということ、時々自分をチェックする必要があるなぁ。再スタート、いい兆しですね〜
カラビ
2012/07/31 23:03
カラ美さんお久しぶりです。私もとりあえずクリエイティブな事をしてるので、興味を持って読んでいたわ。私の意見は、製作は、アトリエだろうが、どこだろうがいいとおもうのだけれどさ、4番目の日常の情念もとても大事だとおもうわ。
いつも前向きで自ら明るくしていかないとさ、作られた作品にもその感情が出てくると思うしね。あとは作品を打ち出していくにあたり、一人では無理なのだからワその人達に感謝をもって行く事も大事かもね。人間関係すごく大事だとおもうわ。私は今回もリビングで作品を作っ部屋が生地だらけ、カレにごめんなさいって感じだったけど、カレもモデルででてくれて本当に感謝でした。次回もたのむつもり、本人もすでにモデル気分で、気分転換の今日この頃でした。
Masu
2012/08/02 07:26
MASUちゃん、コメントありがとう御座います。
こうなると、本当に日常の心構えは大切よね。イヤーな気分になるところへ、ひとは行きたがらないからね。暗い気持ちになっても「これは一時的なものだからづっと続くものじゃないよ」と自分を認めてあげればいいのだと思います。
イベントは盛況のようでよかったですね 楽しみは生きる糧です!
カラビ
2012/08/02 10:24
才能を発見できていない冷おろしです(;;

英語の「gift」には、「才能」という意味もあります。
神様からの「贈り物」に気付かずに過ごしている人々も
多いと思います

冷おろしはアーティストではないのですが、「日常の情念」は
どの世界でも通じる考えですね。運を呼び寄せるのも、心のあ
り方次第だと思います。

ところで、マルチタレント?のリリー・フランキーさんが才能
について以下のように言っています。
「才能とは、自分に出来ることを見つけることではなく、自分
 には出来ないことを発見できる目である。」

含蓄のある言葉ですね(^^;
冷おろし
2012/08/05 15:58
冷おろしさん、コメントありがとう御座います。
心のあり方、その通りですね。そのために観察することが大切だと思います。

>自分には出来ないことを発見できる目

なるほどー。私たちはなにかと足し算で考えがちですが、引き算で解く問題もあるんですよね。私も引き算の練習する必要があります。
カラビ
2012/08/06 10:09
非常に興味深く拝見しました。
こと日本人は「一意専心」というか、ひとつの事だけをひたむきに継続し、歯を食いしばるのが美徳のように考えているところがありますからね〜。
Qさんの生き方も理解できるんです。

けれど…。
>“大きな夢を見続け”、“どんな時でも楽観的であり”、“自分自身と自分の仕事を、すばらしいものと信じて自画自賛していた”

中島みゆきに『夢見る力』という歌があるのですが、やはり楽観的に自分を信頼し続ける事が出来るのはハートの強さと素直さなんだろうなと感じました。
真奈
2012/08/09 19:10
真奈さん、コメントありがとう御座います。

>楽観的に自分を信頼し続ける事が出来るのはハートの強さと素直さ
そうか、言葉にするとそういうことですね!
私もハートを鍛えよう
カラビ
2012/08/10 00:55

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