伽羅創記

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zoom RSS 血よりも濃い女の絆

<<   作成日時 : 2013/05/03 11:08   >>

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  旧約聖書、士師記とサムエル記の間にひっそりとあるルツ記は女性が主人公の珍しい書で、短いけれどとても心に残った。
 飢饉のベツレヘムから、ナオミは夫と二人の息子とモアブの地にやって来る。夫は亡くなり、二人の息子はモアブの女を娶り10年ほど過ごす。息子二人にも先立たれた時、ナオミはベツレヘムへ帰る決心をし、嫁たちに故郷へ帰ってやり直すように言う。ひとりは帰ったが、ルツはどうしてもナオミと一緒に行くと言ってきかない。

「あなたを捨て、あなたから別れて帰るように、私にしむけないでください。あなたの行かれる所へ私も行き、あなたの住まわれる所に私も住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。
 あなたの死なれる所で私も死に、そこに葬られたいのです。もし死より他に私があなたから離れるようなことがあったら、主が幾重にも私を罰しますように」

 ルツは夫を失った女として、ナオミの悲しみがよくわかったのだと思う。その上、今や義母は子供まで失ってしまった。彼女にはなにも残されていない。どうしてこの人をひとりにできるだろうか... ナオミはルツを連れてベツレヘムへ帰る。貞女の美談という以上に、この物語は読んで、私はある奇妙な嫁と姑のことを思わずにいられなかった。


 うちのばあさまはクセ者で知られた性格であったが、なぜか嫁である母(おかん)を攻撃するようなことは一切しなかった。それどころか、外では嫁のことを「うちのあの方(かた)」と貴人扱いするので、近所じゃあの根性曲がり婆さんが一体どうしたことだと不気味がっていた。これには、母が嫁に来てすぐ、ばあさまと交わした約束があった。
「おたがいの悪口を外で言わない。言いたいことがあったら直接言うこと」
 二人とも口が悪くて腹に溜めておけないタイプだったから、口喧嘩のようなものはたまにやっていたが、どっちも言うだけ言って後は清々していた。

 母は「おばあさんは性格悪いからさ〜」と言うくせに、他人がばあさまの悪口言うのを聞くと、 なぜかわからないのだが腹が立つのだった。その昔、じいさまの姉さんという人がばあさまにひどく侮辱的な態度を取った時、その場にいた母は、あたかも自分のことみたいに腸が煮えくりかえったという。追い討ちに飛び出して行こうとする母を、ばあさまは必死で止めたそうだ。母曰く、「わたしは同じ嫁として、おばあさんの立場はわかる。あのババァの言い草は許せん!」
 そんなだから、ばあさまを庇って舅のじいさまと喧嘩になったこともあった。ふてくされてひと月ほど実家に帰っていたが、鬼をもくじくばあさまが「じじいがわがままだから悪い。バカじじいが」と涙ぐんだのにはあっしもたまげた。
 きっと、ばあさまははじめて自分の味方を得て嬉しかったのだろうな。子供にも話さないことを、母には打ち明けていたらしい。
 二人はきもの好きで、よく一緒にきもの雑誌を見ながら、染めるのはこの色がいいとか、帯はこの柄だ、などと話していた。ばあさまが実の娘である叔母とそんなことしてるのなんか見たことない。
 ばあさまが息を引きとる時、母が死なないでくれと冷たくなる足を擦って泣いていたことや、亡くなってしばらくの間、喪失感でオチこんでいたことをずっと後になって聞いた。

 あの二人、なんだったんだろ?前世というものがあるなら、親子だったんじゃないか。なにかで仲違いして、心残りでもあったのかなぁ。やり残した課題を完結するため、今生でふたたび会ったとか... そう思うと、妙に符号するのである。
 うちの父は、仕事の都合で週末しか家にいなかった。だから母は、夫より姑と過ごした時間の方が圧倒的に多い。きもの好きで意気投合してたのは、そんな風に母娘(おやこ)で仲良くやりたかったのかも。この説に関して、前世とかまるで興味のないうちの家族が、母本人をはじめみんなすんなり納得しているのも妙っちゃ妙だ。


 モアブ人はユダヤ人にとって敵対する外国人だった。(ユダヤ人からすると、自分たち以外はほとんどアウトなんだが) ナオミは息子たちの嫁にモアブ人を迎え、共に10年を過ごした。この年月、ルツとナオミの間に強い絆が生まれたのだと思う。夫を亡くし、決して楽ではなかっただろう異国の地に生きるナオミに、ルツは尊敬と親愛があったのだ。モアブの野をベツレヘムへ向かい歩いて行く女二人の姿が目に浮かぶ。
 ベツレヘムでナオミは親戚の男とルツが結婚するように仕向け、死んだ息子の土地も取り戻す。ルツに男の子が生まれ、みんながナオミを祝福する。(この子供オベデはダビデ王の祖父になる)
 このエンディングは、メインキャラクターのルツが急に引っこみ、ナオミに男の子が授かったと書かれているのは不自然という点でいろんな見解があるようだが(参考サイト)、私の解釈では、ルツとナオミは生まれてきた子供に一族の夢を託したのだ。共通の夢を得た二人の結束はますます固い。祖母、母親の期待がのしかかっていた子供として、私はよくわかるつもり。


<参考サイト>
http://www.asahi-net.or.jp/~zm4m-ootk/30rutu.html
http://www.geocities.jp/todo_1091/bible/night-tale/002.htm


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
いい話だ〜。
カーラビンカさんのキップの良さは、おばあ様、お母様と受け継がれてきたものだったんですね。

女の敵は女…とか画一的過ぎるフレーーミングであるような気もしますね。

なんていうか、一種同士愛?
真奈
2013/05/05 10:33
真奈さん、ありがとう御座います。
あれだけ言いたいこと言ってる嫁もいなけりゃ、それを不敵に笑い飛ばす姑もいませんよ こんなだったから、世間でいうところの嫁姑の陰湿な確執を、私はついぞ知らずに育ちました。
同志愛だったんでしょうね。おかん「おばあさんいなきゃ、この家はとっくに滅亡してた」と言ってましたから。ルツ記お笑い版とも言えるかな
カーラビンカ
2013/05/05 11:13
泣いちゃったよ。。。

日本では、嫁&姑は いろいろな問題が起こってしまいます。

こっちにきて、とても好感が持てたのは、
母と息子の妻が不思議な友情でつながることが普通にあるってことです。

まぁ、老後の面倒を見るからとか、
長男が家督を相続するとか、
封建的な農家の嫁のように奴隷のように働かせるとか。
そういった土壌がアメリカには無いからだと思いますが。

だから、その時代に、カーラビンカさんのお母様とおばあ様の関係って、
とても珍しいナァと思いました。
同志愛・・・本来なら嫁同士そうなるべきなんだよね。
親子でもない、姉妹でもない、特別な友愛関係。
にしゆみ
2013/05/08 12:11
にしゆみさん、ありがとう御座います。
私もルツがナオミに一緒に行かせてくれと哀願したところは、目頭が熱くなりました。どこの国でも険悪な嫁姑の関係って聞くけど、にしゆみさんのところは仲良さそうでなによりです。うちのおかんも遠くから嫁に来た口だったから、ルツが外国人だったのと共通するかな。喧嘩しても、女同士心を開いてた関係だったと思います。
カラビ
2013/05/09 23:51

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