伽羅創記

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zoom RSS 追悼抄 −Yさんへ

<<   作成日時 : 2013/05/30 12:28   >>

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 ゆうべ、高校3年で同じ組だったYさんが亡くなったことを知った。かなり前に亡くなっていたようだ。Yさんは文学少女で、高橋和巳が好きだった。私が大江健三郎を読んでいると言うと
「えーっ、意外。そんな風に見えない」
 と言われた。そりゃそうだよね、あのパンクスタイルじゃ。知的で、好き嫌いをはっきり言う歯切れのよさが小気味よかった。
「『堕落』読んだよ。救いのない話だねぇ。面白いけど」
「『堕落』から入った?それ、ちょっとすごい読み方だと思う」
 そんな風に、おたがい話すようになった。
 茶色がかったさらさらの髪、浅黒い肌、白い上衣の夏服のセーラー服で、自転車に乗ってた。私たちは、トイレに連れ立って行くような始終ベッタリの仲では全然なかった。自分の人生を追いかけはじめた頃で、ひたすらスピードを上げるのに夢中だった。
 卒業間近のある日、彼女は私を最初に見かけた時、男子だと思ったと言った。風来坊の体(てい)で構内を歩く私を探したとも。

 彼女は国文学部へ行き、私は美術系へ進んだ。時々手紙のやりとりをしていた。最後に会ったのは、大学何年の時だったか。年月が過ぎ、彼女のことを思い出し、また会いたいと思ったことがある。

 Yさん、Y子、私はあなたをなんて呼んでいたっけ。 夏が嫌いだと言ってたあなたは、いつも夏の陽の匂いをまとっていた。校門を出て、素っ気ないほどさらりと言うさよならが私は好きだった。生命に向かって伸びてゆくようなかわいて橙がかった光の道を、真っ直ぐ前を見つめ自転車で走って行った。あなたはあれから恋をしただろうか。
 あの頃、私はどれほど『堕落』をわかって読んでいたかあやしいけれど、高橋和巳の文学者としての、わが身を切るほどの誠実さに、あなたは惹かれていたのでしょう。先ほど久しぶりに読んだ『わが解体』の余韻は、不本意なものに心を騙して生きてゆけるようになる時の予感を振りきるように走って行った、澄んだあなたのまなざしと重なる。



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