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zoom RSS 佐渡 −晩夏夢語り 4

<<   作成日時 : 2016/09/05 16:21   >>

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  よく晴れた朝、義叔母にお供をして叔父御の墓参りへ行った。墓は佐渡畑野町本光寺にある。よく清掃されたお寺の、小じんまりとした日あたりのいい墓地だった。ここのご住職が叔父御の接骨鍼灸院に患者さんで来ていたことがあり、とても気が合って、また本光寺は実家と同じ日蓮宗だったから、叔父御は死んだらご住職のところでお世話になりたい、と言っていたのだそうだ。
 本光寺は佐渡に流されていた日蓮が、弟子の日朗が運んできた鎌倉幕府からの遠島赦免状を手にした場所に建てられたというお寺だった。

画像 墓前に花とお線香をあげていると、ご住職が見えた。溌溂としたにこやかな人で、叔父御とは懇意にしていた、愉快ないい人だった、いなくなり寂しい、と仰った。まだ新しい墓石は夏の陽をいっぱいに撥ね返し、蝉の声に混じってあの太い声で「おぅ、よく来たなぁ。そうか、アメリカから帰って来たのか」と聞こえてくるかのようだった。墓所は故人の性格のように、これっぽっちも陰惨な感じのない明るいところで、私はこの上なく満足だった。
 寺の門の前に、二人の小坊主の置物があった。四年前、葬儀に来た私の妹が叔父御に似てると言ってたと、義叔母は笑った。たしかに、子供の頃の叔父御はこんな顔だったんじゃないかな。




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 滞在中、大佐渡の山々も小佐渡の山々も、いつも稜線に雲をまとっていた。あのどこかに、黄金を秘めた岩谷がある。
 



 






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 はじめて本物のトキを見た。といっても、佐渡トキ保護センターで繁殖したもので、純日本産最後の一羽は、しばらく前に死んでしまっている。最近は繁殖したものを野に放っている。飛んでいるのを下から見ると、翼が淡いピンク(朱鷺色)で綺麗なのだそうだ。しかし、よく見るとトキってひょっとこ顔だな。









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 佐渡を離れる日も、港から見る山の稜線は絹糸の束のような雲をまとっていた。私には、叔父御は佐渡に来るべくして来たように思えた。誰とでもすぐ仲良くなる屈託のない性格で、人一倍土地に馴染んでいたのもあるが、それだけではない、なにか強い縁にみちびかれて佐渡へ来て、生涯を終えたという感じがしてならなかった。

 叔父御の本棚から、実家の町の文化協会が昭和44年に発行した「児玉風土記」を見つけた。遠く離れるほど募る故郷への想い(ノスタルジア)だったのかなぁと思った。地域限定販売の珍しいものなので借りて来た。帰ってから読みはじめたら、いきなりキターーーーーーーッ❕❕❕  次々に現れる符牒の数々にトリップしてしまった、あっし。

@ 叔父御にとっても私にとっても実家であるわが家は、旧鎌倉街道沿いにある。昔、ちらっとそんなことを聞いた憶えもあったけど、よく調べてみたら、なんとすぐ裏の細い道がそれだった! その道沿にうちの菩提寺もあるのだが、この寺は日蓮が佐渡に流される道中立ち寄った由縁から建立されたといわれている。そんなことから私は従妹弟たちと、叔父御は日蓮上人にお供して佐渡に渡った人だったんじゃないか、なんて冗談半分話していた。
 先日、町の文化協会メンバーの人に、佐渡の叔父御のところで「児玉風土記」を見つけた話をしたら、なんと、日蓮上人のお供で児玉から佐渡へ渡った人の子孫が向こうにいると聞いたというのだ。ひぇ〜〜っ、なにそれ!? 

A 叔父御の墓がある本光寺が建っている場所で、日蓮に遠島赦免状を運んで来たのは日朗と伝えられている。日朗は下総国(今の千葉県北部)の生まれで、わが家の先祖も下総国から来ていた。(日蓮は千葉南部の生まれ)

B 私が佐渡で観た能「経政」は一ノ谷の合戦で敗れた平経正のことであるが、「児玉風土記」には、経正を討ち取ったのは武蔵七党の武士、児玉党の蛭川高家だと書いてある。Wikiによれば、経正は河越重房の手勢によって討ち取られたとなっている。いずれにしても、児玉党は経正の敵軍であったのは史実だ。なぜ、よりによって、私は佐渡で「経政」を観たのか...

 他にもいろいろ調べている最中だが、どうもこれは私に送られたメッセージのように思えてならない。


 隠岐西ノ島で、私はその土地の伝説が事実であるかどうかより、それを語り継ぐ人々のまなざしの先にあるものを知りたいと思った。佐渡で語られていた話、畑野の安寿塚も、順徳天皇皇女の墓も、源頼政が鵺を射抜いた矢の竹も、真偽の程はわからない。しかし、伝説を語り継ぎ、遥か昔に伝えられた祭儀・慣習を繰り返すのは、自分(達)がなにものであるのか、どこから来たのかを忘れないでいようとする根源的な欲求であることは間違いない。私たちはつねに物語(saga)を必要としてきたのだ。





 
 

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